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弊社代表和田知浩が、折に触れて気ままに「人生成功」に関するメッセージを投稿しています。
vol.352 TBS「ガラッとチェンジマン」からのオファーで解説。寝起きの悪い子供が、蚊の羽音のモノマネでサッと目覚める理由。2024.9.14
今月6日にTBSの番組で私が解説したシーンが放送されたのでいつものように振り返る。
担当者から初めて電話を頂いたのが6月14日。特番の「ガラッとチェンジマン」で、「寝起きの悪い子供に蚊の羽音のモノマネを聞かせるだけですぐに目覚める」理由を解説して欲しいというもの。
今回は脳波測定ではなく、コメントだけのオファーだ。
昨年大晦日に放送された日本テレビの番組「笑って年越し!THE笑晦日」で、寝起きの悪いタレントが蚊の羽音で見事に起きた一件もご存じだった。
この「笑って年越し!THE笑晦日」の模様は、ブログ『vol.344 日本テレビ「笑って年越し!THE笑晦日」で実験した「目覚めの悪い人でも蚊の飛ぶ音ならすぐに起きる」を解説したインタビューで失敗するに行き着くまでの数々の選択ミス。2024.1.4』で紹介している。
私の元には、大学や企業の研究機関やユニークな方達からの色んな脳波測定案件が舞い込んでくる。独りで脳波の研究をしていたらとても思いつかないような目的やシチュエーションでの脳波測定である。
眠っている人が小さな蚊の羽音だけで起きるのかという実験も、私独りではやってみようとはしなかっただろう。
今回の実験は、実際の蚊の羽音ではなく、お母さんの生のモノマネ音声だ。
よって、いわゆるモスキート音とは言えない。
モスキート音(蚊の羽音)とは、とても周波数の高い不快音で、聴力が少し弱った中高年の意識レベルに上がることは無い。コンビニの庭先にたむろする若者を撃退するために設置さたと話題になることもあった。最近も、ご近所関係のトラブルで、モスキート音が関係していたのではないかとのニュースが流れた。
でも、今回は優しいお母さんのモノマネ音声だ。それでも、寝起きの悪い子供が簡単に目覚めるのはなぜか?
番組ディレクター達とのZOOMミーティングが、6月18日と決まった。
私なりの解説をするためにパワポ資料を用意して臨んだ。アニメーションも駆使して約7分にまとめた。
詳しくは公開できないが、一部のパワポ画像を以下に紹介する。
この意識の図は、私からの情報を受けとっている諸氏には馴染みのものだ。それに、蚊のイラストを加えた。
これは、覚醒時の脳コンディションに関する解説だ。同じ目覚めでも、オレキシンとセロトニンなら幸福感を伴い、オレキシンとドーパミンなら意欲的に目覚める。オレキシンとノルアドレナリンなら機動的(戦闘モード)な目覚めとなる。
目覚めるときには神経伝達物質のオレキシンが分泌されている。それと同時にどんな神経伝達物質が一緒に分泌されるかで気分が違うのだ。
例えば、お風呂にゆったりと浸かっているときに、思い立ってサッと湯船を出ることがあるだろう。あの急速な覚醒が神経伝達物質オレキシンのなせるワザである。そして、思い立った内容によって、セロトニンかドーパミン或いはノルアドレナリンが伴って分泌されて、それぞれ特有の気分転換を実現する。
それでは、蚊に刺されて起きるときはどうか? これは、痒みによってノルアドレナリンが分泌されて機動的な覚醒となるのである。
「蚊の羽音」→「蚊に刺されて痒い」→「ノルアドレナリンの分泌」という体験を繰り返し、或いは大きなインパクトをもって一度体験すると、以下のようにパブロフの条件付けが作られる。
すなわち、「蚊に刺されて痒い」体験をしなくても、「蚊の羽音」を聞いただけで「ノルアドレナリンの分泌」が起こるのだ。
弊社でのロケは6月26日と決まった。
OAではカットされていたが、蚊の羽音のモノマネ音声で子供が目覚めるのはなぜか、その重要な仮説を以下に2つ述べる。
1.蚊ならではの暗示効果がノルアドレナリンの分泌を高める
重要なのは暗示である。暗示がてこのように働いてアドレナリンの分泌をてごをする。
余談だが、島根では私の親世代が“てごーする”とよく言う。この“手伝う”という意味の“てご”とは、てこ(梃子)と同じである。“梃子の原理”の梃子だ。
閑話休題
暗示とは「物事を明確には示さずに、それとなく伝える」という意味だ。
蚊の羽音は小さいが故に、その小さな音が聞こえるという事実を以て、危機(痒い思いをする)がすぐ近くにあることを暗示する。だから飛び起きる。飛び起きなくても、覚醒度は一気に高まるのだ。
ステップ1「蚊の羽音はとても小さい(事実)」
ステップ2「羽音が聞こえるから蚊が、すなわち危険がとても近い(暗示)」
ステップ3「潜在意識がノルアドレナリンを大量に分泌し、顕在意識の早急な対応を促す(覚醒)」
小さな声でも子供がパッと目覚めるので、親にとってはコスパがいい。すなわち、掛ける労力と時間に対して成果が大きい。
痒い思いを想起させるなんて子供がかわいそうと思うかもしれないが、親が長時間苛々して起こすのよりはよっぽどましだ。
2.ものまねでも効く訳
それは、刺激汎化という現象だ。
蚊の羽音が聞こえたら目覚めるという条件反射が一旦形成されると、その後は、本物の蚊の羽音でなくても、それと似た音であれば同じように反応、すなわち目覚めるのだ。
一瞬のOAだったが、楽しく有意義な克服法だった、と思う・・・
お試しあれ!
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.351 企業研修のマッチングメディア「キーセッション」からのオファー。2024.6.7
先月24日、企業研修講師としてインタビューのオファーを受けた。
この記事が昨日掲載されたので紹介する。
研修導入企業と講師をマッチングしている「キーセッション」、掲載ページは以下URLである。
https://keysession.jp/media/wada-chihiro/
本ブログでは、その内容を音声で紹介する。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.350 人生にチャンスと幸運を呼び込むトリガー。2024.5.19
チャンスに巡り合うとか合わないとか、運が良いとか悪いとか、人は時々思うものである。
天運に任せるしかないと思うことも確かにある。
しかし一方で、絶好のチャンスや幸運を自ら呼び込んでいるように見える人もいる。
心の状態に共鳴した現象の素が衆縁によって現実化するのだ。
絶好のチャンスと幸運を呼び込むにふさわしい心の状態、すなわち人生成功の心構えに整える方法とは・・・。
25年ほど前、私が会社勤めしていたときに、別の階で働いていた社員達から次のようなことを言われることがあった。
「和田課長を見たから今日は良いことがありそうです」
経験則なのだそうだ。
当時私は、能力開発や自己実現に関するセミナーを全国十都市で継続的に開催し、熟れた頃には一部をビデオ撮影して「成功する自己操縦法 〜成りたい自分になり、送りたい人生を送る〜」のタイトルでリリースしていた。
新入社員に自社製品のメソッドをレクチャーしたり、たまに社員研修を実施することもあった。
たまにしか会わない社員からすると、「私=メソッド」なのだ。たまにしか会わないから私のメッキも剥がれにくい。
だから私が、そんな社員のメンタルセット・トリガー、すなわち「成功する心構えに戻る引き金」になったのだろう。
人であろうが、物であろうが、場所であろうが、出来事であろうが、正しい心構えに戻るトリガーを持つことはとても有益である。
8年前に出版した書籍「宣言 アファーメーション・バイブル 〜言霊の生かし方〜」 についても同じような感想を読者から頂戴することがある。
アファーメーションとは、まさに人生成功の心構えを形成することが目的のメソッドなのであるが、そのメソッドによるまでもなく、ただ読んでいるだけで、ただ手にしているだけで良いことがあるというのだ。
本書で私は、ただ読むだけでなく実践することの大切さを述べているし、その考えに今も変わりはない。
しかし、ただ読むだけ、ただ手にしているだけ、ただ目に付くところに置くだけでも、ある人には効果があるようだ。
できるところから、是非!
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.349 孤高を目指して。2024.2.3
いずれは独りで試しなさい。
いずれは大衆の中で試しなさい。
そうして完成させなさい。
集団の固定化は滞りと腐敗、甘えなどを招くのが常である。
集団力学(グループダイナミクス)の利点も固定した集団ではいずれ減衰、或いは崩壊する。
世界の人々を補欠として、孤高の人のみの流動的な人員で集団を構成しながら展開し、目的を達成したら解散する。途上で解散することもあるだろう。
このように集団視点で考えると個人が使い捨てにされていると感じるかも知れないが、孤高の個人視点で言うなら集団を踊り渡っている感覚だ。
人員を固定化せず流動性を保つ。衆縁和合の自然作用を止めずに、いつでも新鮮で最高なメンバーと仕事をする。
全ての分野でとはまだ言えないが、インターネットの出現で徐々に実現してきた。少し俯瞰したスパンで言うなら“一気”にだ。
だから、いずれは大衆の中で独りになって試しなさい。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.348 大切なものは手放してこそ。2024.1.30
大切なものはどこにいる? どこにある?
大切なものは自然がいい。自然で一番輝いている。
大切なものは自由がいい。自由で一番発揮している。
大切なものは無作為がいい。無作為で一番適っている。
檻に入れたり鎖に繋いだりせずに手放して、その大切なものを自然に自由に無作為に・・・
偶然触れ合ったら一瞬とことん愛でてまた手放す。これ最高!
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.347 両論併記を求める前に。2024.1.27
両論併記を求める前に、多論見聞して持論を確立すべし。裁判官じゃないんだから。
その奥の奥、根本まで論を越えて見通すと、物事の義は自ずから現れる。
任せること、放っておくこと、突き止めること・・・。
遊に生きるコルパーはこのバランス感覚、そう“センス”が良い。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.346 ちょっと変えてみる。2024.1.20
ちょっと変えてみる、それが出来るか出来ないか、この違いだけだ。
マスコミでも色んな専門家が出てアドバイスしている。
私も、脳波や人生成功、能力開発などについて専門家としてコメントすることがある。
そして、例えば脳波についても、他の専門家が私の認識とは全く違う回答をしているのを目にすることがある。
人はある意味とても柔軟な恒常性を持っているから、信じた人の間違った言葉を鵜呑みにしても何ら問題なく生きていける。むしろ、プラシーボ効果で調子が良いくらいだ。
良い悪い、役立つ役立たないの分かれ目は、うまくいかないと感じたときに“ちょっと変えてみる”ことができる方法であるかだ。
その時に必要な相談相手は、持論に凝り固まった専門家よりも、沢山の選択肢から何か一つ、自身をちょっと変えるに適切な方法を教えてくれる人だ。
そもそも優秀な専門家とは、広い知見と柔軟性、そして頓知力を有しているものだ。
今の人生がうまくいっているなら、そのまま人生を謳歌すれば良い。
不調なら自分の何かをちょっと変えてみよう。そのヒントをくれるのが良きアドバイザーだ。
自己助言(セルフ・アドバイス)も然りである。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.345 NHK総合の番組「世界!オモシロ学者のスゴ動画祭」に脳波測定協力した際に、対テレビ番組としては初めて締結した「秘密保持契約」。2024.1.18
今月16日にNHK総合で「世界!オモシロ学者のスゴ動画祭7」が放送されたのでいつもの様に振り返る。
と、いつもの様に書き出したが、今回はそれができない。
実験協力する前に3者間で「秘密保持契約」を締結したからだ。
大学や企業から「脳波測定/脳コン解析サービス」を受注する際に秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)を交わすことはある。
テレビ番組に協力する際も、在京の1局は現場で誓約書にサインを求めてくる場合がある。エキストラに対して示すような文面だ。これに署名したからといって私の行いが変わることはない。
しかし、今回の要望はしっかりと受け止めて進めなければならないと感じたので、私の気持ちと考えも伝えた。
後日、契約書案が提示され、概ね合意した。別途要望していた秘密保持契約料についてもその金額を決定した。
実験当日には印を持参し、実験前に押印してから脳波測定を開始した。
この番組は、NHK+で今月23日(火) 午後8:45 まで視聴することができる。
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2024011631628
OA画像はいつものように弊社「テレビ番組協力実績」紹介ページに掲載した。
好きな人の「シャー」という声をシャワーで聞く癒し効果、商品化されるといいね!
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.344 日本テレビ「笑って年越し!THE笑晦日」で実験した「目覚めの悪い人でも蚊の飛ぶ音ならすぐに起きる」を解説したインタビューで失敗するに行き着くまでの数々の選択ミス。2024.1.4
ロケの後、「ハーッ」とか「クソー」とか・・・、溜息と感情が何度も繰り返し私の口を衝き、それは放送された大晦日まで続いた。
番組担当者から初めて電話をもらったのが11月30日。昔レギュラー放送していた「伊東家の食卓」が大晦日のスペシャル番組で復活するので、当時紹介した“裏ワザ超快テック”を改めて検証したいとのことだった。
検証する裏ワザ超快テックは、「目覚めの悪い人でも蚊の飛ぶ音ならすぐに起きる」である。
担当者から「和田さんの言葉で解説して欲しい」と言われた。無論問題ない、望むところだ。睡眠脳波をリアルタイムで解説することはいつもやっていることだ。
12月4日にはディレクターから電話をもらい、準備する機材や裏ワザ超快テックの見解等を摺り合わせた。昔のレギュラー放送時に解説された“ピンクノイズの効果”については割愛した方が無難であることも意見が一致した。
電話を切った後に思った。「うん? これは私がこの裏ワザ超快テックを推薦する立場なのか? 私が伊東家の人々の厳しい目に晒され伊東四朗さんに鐘で判定されるのか? 私は脳波測定して深い眠りを実況すれば良いだけではなかったのか?」
この懸念は担当者にメールで伝えつつもチャレンジすることにした。
寝付くため、或いはスッキリと目覚めるためのグッズや方法をこれまでにも脳波測定で検証してきたので、セルシネにはこの分野の知見も沢山ある。目覚める方法に、且つメディア紹介されたケースに絞っても、例えば以下のような経験をしてブログに投稿してきた。
■vol.237『日テレ「所さんの目がテン!」−「朝の科学」「鉄道博物館の科学」。先月は2つのテーマで脳波を測定した。』 2013.5.2
https://selsyne.com/aim/blog/2013.htm#237
■vol.290『仮眠のうまいとり方・・・。テレビ朝日「日本人の3割しか知らないこと。くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」からのご用命で。』 2017.5.30
https://selsyne.com/aim/blog/2017.htm#290
■vol.317『朝スッキリと素早く目覚める絶妙の楽曲を紹介。TBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」からオファーを頂いて。』 2019.10.23
https://selsyne.com/aim/blog/2019.htm#317
■vol.324『目覚め方のコツと重要性。毎日放送「林先生の初耳学」〜誰でも起きられる目覚まし音を作れる?〜で、終夜睡眠脳波を測定して。』 2020.9.11
https://selsyne.com/aim/blog/2020.htm#324
■vol.325『目覚めが悪い芸能人を起こす方法の第二弾。毎日放送「林先生の初耳学」からのオファーで“わさび臭”の目覚まし効果を検証。』 2020.12.18
https://selsyne.com/aim/blog/2020.htm#325
■vol.333『極寒極霧の屋外ロケ。TBS「水曜日のダウンタウン」で検証した脳の逆サプレッション機能。』 2021.12.5
https://selsyne.com/aim/blog/2021.htm#333
そもそも今回の検証は、私の本職である「能力開発/目標達成の支援」という側面からも重要なテーマであり、脳内の情報伝達について様々な場面で発表してきた。脳波測定は、メンタルトレーニングを効果的に実践する方法を研究するための道具として始めたことだ。かれこれ37年になる。
例えば、書籍「宣言 アファーメーション・バイブル 〜言霊の生かし方〜」では、「意識の図」として紹介している。全ての情報はまず潜在意識で受け取り、そこで取捨選択や減衰/増強が為されたごく一部の情報だけが顕在意識に昇ってくる。
潜在意識のこのような情報コントロールを顕在意識が制御できるようになってくると、人生の運が良くなり楽になるのだ。
動画では「セミナー風景−潜在意識について」
「第1回「ジブリメーション研究開発」の様子」
「目標達成や人間関係がうまくいかない時の自己改善法を『情報循環モデル』の視点で考えるVer2」
等で発信している。
脳内情報のコントロールは人生成功に欠かせないのだ。
脳における情報の“取捨選択と減衰/増強”機能を視聴者に分かり易く端的に伝えるためのセリフを考えた。何度も何度も練習しつつ文章をブラッシュアップした。それが以下の文章である。
『人が受け取る音は、聴覚を通じてまず無意識の領域に入ります。そして、一部の音だけを意識レベルに上げています。
このような働きを「パーソナル・マインド・フィルター」と呼ぶんですが、眠っている時には当然殆どの音をブロックして、安眠を維持します。
しかし、過去の不快だった体験に結びつく音が入ってきますと、その音を意識レベルに上げて目覚めさせ、回避行動をとらせるんです。』
セミナー等では、“顕在意識”や“潜在意識”と呼ぶが、ここではより分かり易く“意識”や“無意識”とした。ただ、“パーソナル・マインド・フィルター”だけは敢えて入れた。もしも、更にそれっぽい用語を使った説明をリクエストされた場合には、“視床”の働きを簡単に話そうと思っていた。
長さも極力切り詰めたが、それでも約35秒掛かった。後は編集に任せるしかない。
ロケ当日(12月8日)は、ロケ現場に指定された浅草のホテルに1時間前には到着した。撮影クルーの到着を待つ間、ロビーのソファーに座って最後のリハーサルを繰り返した。目標達成の基本であるJR(準備と練習)はこれでバッチリだ!
程なく撮影クルーが到着し、10階の撮影現場に案内された。今にして思えば、ここから私の選択ミスが重なっていったのである。
ディレクターに会うなり、「インタビューは研究所(セルシネ)でやりたい」と言われた。私は、研究所と言っても自宅マンションの一室であること、そしてちょうど大規模修繕工事中であることを伝えて渋った。セルシネのHPに掲載しているその一室(セッションルーム兼執務室)をスマホで開きディレクターに見せた。
ディレクターは一瞬迷う反応を見せたが、それでもセルシネでインタビューしたいと切り返してきた。もう応じるしかない。
家族にメールで事情を伝え、撮影作業の邪魔にならないように応接テーブルを移動しておくように頼んだ。
ホテルでは、実験ロケが始まった。被験者は四千頭身の都築拓紀さん。脳波測定器はBrainPro「FM-939」を用いた。ベッドサイドのテーブルに置かれている黒いマシーンがそれだ。
隣の部屋で、後藤拓実さん、石橋遼大さんと共に睡眠の様子を見守った。脳波解析PCアプリは「AnalyzerPlus」である。その中のヒートマップを中心に睡眠深度を解説した。
測定開始から35分が経った頃、強いδ波がしっかりと継続したので「一番深い眠り」であると私が判定し、石橋さんが音源を持って隣の部屋へ向かった。
“蚊が飛ぶ小さな音”で起きるのか・・・
結果は、放送された通りである。
実験ロケはとてもうまくいき安堵した。このままホテルでのインタビューなら問題ないのだが、ここから練馬の我が家(セルシネ)に移動してのロケだ。家族にメールで念押しした。
ロケバスにはディレクターとスタッフの2人が乗車した。インタビューはディレクターがカメラマンを兼ねるのだなと思った。よくあることだ。移動中私は、例の解説を改めて繰り返し練習した。
そして、我が家に到着。ロケバスを降りると、なんともう1台のロケバスが後に着けた。カメラマンや音声さんなどの技術部隊も来たのだ。とても全員は部屋に入られない。
慌てて私だけ7階に急いだ。スタッフに「ちょっと待ってて」と声を掛けてから向かえば良いものを・・・。これも行動選択のミスだ。
玄関を入ると廊下に大きな段ボールが出ていた。「なんでこんなもん出しとるん」と家族に文句を言いながら片付けた。マンションが大規模修繕工事中のためベランダの物を部屋に入れていたり、年末の掃除とも重なってゴチャゴチャだったのだ。
セッションルーム(唯一のセルシネ部屋)を確認するとテーブルは移動してくれていたが、散歩用の服が掛かっていたりゴミ箱にゴミが溜まっていたのでそれらを片付けた。玄関に入ってから1,2分が経過しただろうか?
スッキリとインタビューを受けたかったので最後にトイレに入った。膀胱から3分の2程を放尿したときにインターホンが鳴った。家族に「出んでえーでー」と大きな声で伝えながら完放した。
リビングのインターホンにはエントランスのクルーがまだ映っていた。ドアを開けるボタンを押して「降りまーす」と伝えた。なんで? いつものように、乗るエレベータを伝えて来訪を待っていれば良いものを・・・。これも行動選択のミスだ。
どのエレベーターに乗ったら良いのか分からないから、クルーは夜空のコンコースで点々と立っていた。申し訳ない。
7階に上がり、セッションルームに案内した。クルーはすぐに撮影配置を検討しはじめた。椅子を訊かれたが、数日前に背もたれが折れたので机の下にもぐらせていた。
「何か椅子はありませんか?」と訊かれたので、移動していた補助椅子を一つ持ってきた。確かに、主が来客用のソファーに座っていたらおかしい。(視線の高さを合わせるために)ディレクター用の椅子もリクエストされたので、もう一つ補助椅子を持ってきた。
「マスク(備品の箱)はどかして良いですか?」と訊かれ、「はい」と答え、机の上が殺風景だったので、「このメカニカルな脳波測定器を置きましょうか?」と提案した。
2台のカメラ位置が決まり、マイクも付けられた。他のスタッフは廊下で待機している。
そしてSit down. 座ると間髪無くディレクターからインタビューの質問が一言発せられた。
そこでまた私は行動選択のミスを犯した。例のセリフを全部通して喋りだしたのだ。本当は、覚えたセリフを一旦脇に置いて(忘れて)、ディレクターの質問に完全一致の回答を短く返すべきだった。これもミスだ。
喋っているとすぐに息が上がり始めた。水泳選手がレース直後にインタビューを受けている感じだ。否、私の場合は、取組後にインタビューを受けている関取の感じと言うべきか。
一旦ストップして数分の有余をもらい息を整えれば良いものを、息も絶えだえに喋りきった。俳優さんがテレビ番組で時たま言う「監督からストップの声が掛かるまで演技を止めない」の言葉が頭をよぎり、バカなチャレンジ精神にスイッチが入ったのだ。これも選択ミスである。
練習時の35秒が、この時は40秒以上掛かったのではないだろうか? セリフが所々で一瞬出てこなかった。
インタビュー時にはセロトニンかドーパミンの脳内環境で応じたいものだが、恐らくこの時の私の脳内にはノルアドレナリンが、或いはそのノルアドレナリンがアドレナリンにまで変化して放出されていただろう。
喋りきった後に「緊張したー」と言うと、ディレクターも「(緊張しているのが)分かりました。(カンペを)書きましょうか?」と訊かれた。しかしそれはお断りした。カンペを読み出すともっとグダグダになるからだ。ディレクターもそれは分かっていて、私の希望を受け入れてくれた。
ディレクターから改めて幾つかの質問をもらい、それに一つひとつ答えた。しかし、息はまだ整わない。喋った内容もまだ納得してもらっていないようだ。
「脳の“視床”という部位を絡めて説明しましょうか?」と訊ねると、ディレクターは「いいえ、“無意識”という言葉さえ使いたくないと思っています」と。
正味10分弱のインタビューとなっただろうか? 「これリハーサルですよね?」と駄目元で言ってみたが、ディレクターにはあっさりと却下された。「後はつなげて(編集して)なんとかします」と。
撮影が終わった後、カメラマンに「和田さんも緊張するんですか」と言われたから、傍目にも本当にそう見えたのだ。
クルーが帰った直後から、「ハーッ」とか「クソー」の溜息と感情の無意識的な吐露が始まった。
大晦日の放送直前に投稿したメルマガ3誌共通号外「年末のご挨拶」でも次のように書いた。
・・・前略・・・四千頭身(都築拓紀さん、後藤拓実さん、石橋遼大さん)と共演して睡眠脳波を測定したのは良かったのですが、他のシーンではとても緊張したので、「見るなよ、見るなよ」(故・上島竜兵さん風)と言いたい気分です・・・後略・・・
18時39分過ぎ、とうとうこのコーナーが始まった。全国に醜態をさらすのかと覚悟した。
「あれっ、いい感じじゃん」と思った。
さすがプロのカメラマンだ。画角もホワイトバランスもピントもバッチリだ。当たり前と思うかも知れないが、ディレクターやアシスタントが撮影した場合は今一つのことが普通にある。やはり画が違う。
私の喋りは21秒、ナレーションを加えても29秒。トータル5分25秒間に楽しく且つ分かり易くまとめられた“裏ワザ超快テック”の紹介で、CMもまたいだ。
部屋にあった脳波の専門書と私の著書を見つけた制作スタッフがデスクトップPCの横にこんな風に並べてくれていた。
今にして思えば、せっかく大きなPC画面が写っているのだから脳波グラフの動画を再生すれば良かったと思う。後のソファーにも埃よけを掛けたままだった。
写ってはいないが、私の頭上には“濡れタオル”を掛けるための紐を張ったままだった。
加湿器はメンテナンスが重要だし、機種によってはカルキが壁やカーテンに付着してしまう。だから私は古典的な濡れタオル掛けに戻している。それでもちゃんと湿度計の数字が5分毎に上がるのが分かる。
閑話休題
そんなことにも気づかないほど、ロケ当日の私はバタバタだったのだ。
幾重も重ねた行動選択のミスだが、編集の妙でどんでん返しの出来となり、この番組が私の宝物(誇れる実績)の一つになった。
そして、24日も続いた「ハーッ」と「クソー」の溜息と感情は、放送を見た途端に「ホーッ」「良かった」に一変した。
一つ間違いがあったので訂正しておく。
私が斜めからペンで指し示したポイントがずれて見えたようだ。デルタ波の帯域幅を示す青い四角はシータ波まで被っている。実際にはこの半分の幅がδ波の帯域である。
アルファ波の帯域を示す赤い四角は、ベータ波の一部である。実際は画面上の青い四角の右側までずらさなければならない。
ヒートマップの横軸目盛りに周波数の数値が半分見えるので、黙ってやり過ごすわけにはいかない。一般視聴者には問題ないと思うが、脳波を学ぶ人には念のため訂正しておく。
各脳波(定常波)区切りの詳細は、セルシネHPの「ノウハダス」―「4.脳波の種類と特徴」に掲載している。
コーナーの終了直前のワイプには、欲目だが伊東四朗さんも納得されているように見えて嬉しかった。
今月7日の16時14分まで、TVerでこの番組が視聴できるようだ。
また、蚊が飛ぶ音を番組HPからダウンロードできる。是非、お試しあれ!
感謝!
セルシネ・エイム研究所 和田知浩 |
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